機械学習における深層学習とMT法の違い

ものづくりの現場に適するMT法

MT法と深層学習の違い

MT法と深層学習の得意分野

MT法は監視や検査問題など、ものづくりに関わる課題を得意とし、深層学習は画像や言語処理などの課題を得意とすると言うことができます。
MT法がものづくりに適する理由は、「異常検出感度の高さ」と「人間にとっての理解しやすさ」です。深層学習の性質が次第に明らかになり、MT法などと使い分けることの重要性が認識されるようになってきました。人工知能模式図

構造の違い

MT法構造図MT法の構造
MT法の距離対象との距離

MT法は左図のようなネットワーク構造を持ちます。〇が項目、線が項目間の相関です。MT法は、この構造を利用してパターンの相違を判別します。相関とは、二つの項目間の関係の大きさです。たとえば水道の蛇口の開度と水量には大きな相関があります。相関は全ての項目間で、その大小を求めることができます。
左図は〇が14個ですから、この場合は14項目で機器の監視や検査を行います。そして、この相関ネットワークは、正常データのみから求めます。正常データのみで認識の基本構造を決めることが、MT法の大きな特徴です。
次に、この正常な相関ネットワークから対象までの距離を計算します。そして、距離が近ければ正常、遠ければ異常と判定することができます。
距離の計算手段として、マハラノビス距離という統計数理が利用されます。一般には距離が4を超えると異常と判定されます。つまり、距離が4以上となれば、正常の仲間と言える確率がかなり小さくなるということです。
なお、項目数が14の場合の相関ネットワークはここに描かれた1通りです。これ以外の構造はありません。

オートエンコーダ構造図深層学習の構造
(オートエンコーダの場合)

深層学習は入力層と出力層、そして隠れ層からなる構造を持っています。左図は14項目を入力する構造の例です。左端と右端にそれぞれ14個の〇があり、3つの隠れ層を持っています。〇は人間の脳細胞、直線は細胞間の結合強度を示します。入力層と出力層に“教師データ”と呼ばれる既知のデータを与え、数千回から数万回の繰り返し学習により、細胞の状態と結合強度が決まります。
左図では入力層と出力層の細胞数が同じで、さらに隠れ層は左右対称です。この構造ではMT法と同様に正常データのみを学習することができます。この構造はオートエンコーダと呼ばれます。入力されたデータが隠れ層でいったん圧縮されるからです。
学習したパターンと同類のパターンが入力されると、出力層14個に現れる値は入力データとほぼ同じで誤差が小さくなり、異質のパターンが入力されると誤差が大きくなります。誤差の大きさにしきい値を設定することにより、正常か異常かを判別します。
なお、深層構造では隠れ層の数や細胞の数は、利用者が任意に設定します。つまり、隠れ層を7層や9層にすることもできますし、細胞(〇)の数も任意です。したがって、さまざまな構造が考えられます。

特性の違い

MT法と深層学習の距離結果比較

MT法と深層学習の特性比較
MT法は異常データへの感度が高く、
学習データの誤差も小さい

MT法はただ1種類の状態(正常状態)だけを学習します。

ものづくりの現場、つまり工場や機器の稼働監視や製品検査では、正常状態がいつも通りであり、異常はさまざまで未知の異常もありえます。したがって、異常状態を完全に網羅することは不可能です。そのため、正常状態だけを学習し、“正常ではないこと”が発生した場合にのみ、警報を出す用途には、MT法が非常に適しています。

また、MT法では異常と判定された場合の原因診断が可能です。どの項目がいつもと違っているのか、あるいは複数項目のバランスが違っていたのかを明瞭に描き出します。ですから、ホワイトボックスAIと呼ばれています。技術者は診断結果を元に、次の対処をすることが可能です。

深層学習は一般に、一つのネットワークで多くのパターンを学習します。そのため、画像・文字・言語などの分類問題で威力を発揮します。

ただし、深層学習でもMT法と同様に正常なデータだけを学習することができます。その構造が前述の“オートエンコーダ”と呼ばれる構造です。この構造で学習させると、正常データが入力されたときには出力値の誤差が小さく、正常ではないときには誤差が大きくなります。したがって、誤差の大きさから正常か異常かを判定することができます。

また、出力層の細胞(〇)それぞれが示す誤差は、項目毎の異常原因と言えますので、そのまま異常診断となります。しかし、そこに示される値を人間が理解することは、多くの場合困難です。なぜなら、深層学習の学習結果がブラックボックスだからです。なぜその結論に至ったかの理由はわかりません。

特性の比較(ものづくり現場の場合)

異常原因診断結果の比較

原因診断結果の比較(横軸:項目番号)
MT法の診断結果は理解しやすいが
深層学習の結果は理解困難

MT法の特性は:
・良/不良の認識結果がより明瞭に現れ、異常原因も人間にとって理解しやすい
・正常データのみを学習するため、未知の異常にも感度を持たせることができる
・高速でメモリ負荷が小さく、エッジ・コンピューティングに適する

深層学習の特性は:
・ほぼ人間の認識結果と一致するが、認識理由は人間の理解が困難
・複数のパターンを一つのネットワークで学習することができる
・メモリ容量、計算時間の問題がなければ膨大な情報を処理することが可能

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