応用事例


画像検査

概 要

少ない学習データで、人の判定に近く、見逃しや過検出がない検査を短時間に実行します。アルミダイキャスト製品の外観検査などに活用されており、湯じわなど微妙な欠陥も正しく判定することができます。

正常状態の定義
(単位空間)

傷や汚れのない画像データを単位空間とします。画像は数枚で済み、最小は1枚です。

計測データ

この事例の場合は、中空の穴内部を撮影するカメラによる画像データを利用しました。その画像を下の図に示します。左側が正常、右側が傷のある画像です。

なお、画像データを得る手段としてはラインカメラや顕微鏡撮影などもありますし、照明の波長を選択することで、人間の目視検査では見えない情報を得ることもできます。

湯ジワOK・NG

湯じわなし

湯じわあり

特徴化

MT法による画像処理の大きな特徴は、画像を波形の集合に変換する点です。欠陥部分は波形が乱れますので、異音検査やスペクトル波形検査の技術を適用することができます。すなわち、変化量・存在量・開始長・終了長などの特徴を抽出します。処理速度は他の画像処理による方法の100倍以上、欠陥検出感度も優れています。

結 果

キズや汚れ、亀裂などを高感度に検出します。

関連ソフト


イプシロンロケット自律診断

概要

相関の毬

JAXA(宇宙航空研究開発機構)のイプシロンロケット自律診断には、アングルトライのMTシステム(MT法)が採用されています。従来のロケットでは多くの作業員によって厳密な検査・診断作業が行われてきましたが、イプシロンロケットはその作業をパソコン(AI)に任せることで、大幅なコスト削減を目指しています。
ここでは、噴射ノズルの駆動系診断の例をご紹介します。

モータ電流波形モータ電流波形

噴射ノズルは模式図に示す構造となっており、ノズル角度はモータにより調整されます。打ち上げ前診断では、モータ駆動電流とノズル動作角度の関係が正確かどうかを検査します。もし異常があるとすると、モータ駆動電流の波形がわずかに歪みます。電流波形の例も図に示します。

正常状態の定義
(単位空間)

ノズルの角度をさまざまに変化させ、正常に動作したときを単位空間としました。

計測データ

ノズル制御角度(ポテンショメータ)、モータ電流など

特徴化

電流波形の形状特徴(変化量、存在量、開始長、終了長など)

結 果

電圧変動などに伴う微妙な電流波形の乱れも瞬時(0.002秒)に検出することができ、波形の異常箇所も診断ができるようになりました。

補 足

ロケットは量産品ではないため、過去の類似事例のデータのほかに、シミュレーションによるデータも併用しています。

関連ソフト

MT-SDK(MT法、特徴抽出等ライブラリ)


異音・振動検査

概要

カーオーディオのディスク装填・イジェクト駆動部には、複数の歯車列があります。多くの場合、プラスチック歯車が使用されますが、歯車に傷があると、わずかですが異音が発生するため、1品ずつ出荷検査が行われていました。従来は防音室内で聴感に優れる若い女性が検査していましたが、作業に精神的負担が大きいことや判定の不安定さがありました。
検査自動化のために音波形をFFTで解析する方法などが試みられましたが、検査員と代わり得る結果を得ることができませんでした。

ギヤ列

正常正常

正常音と同質正常音と同質

異常異常

正常状態の定義
(単位空間)

3名の検査員の聴感検査で、全員「合格」と判定した10個の音波形を単位空間としました。

計測データ

高感度マイクロフォンが計測した 50,000サンプル/秒 の音データ

特徴化

音波形から直接求めた形状特徴(変化量、存在量)で、合計22項目。FFTは使用しません。

結 果

検査員と同等以上の検査結果を得ることができました。以降、検査の全自動化が実現しました。

補 足

類似の事例として、ポンプ出荷検査、エンジンの出荷検査などがあります。

関連ソフト


設備・機器の監視

概 要

MRIやCTなどの医療機器は緊急手術に使用されることもあるため、稼働時以外でも常に機器が正常であることを確認しています。10分おきに各部の温度や電気特性を計測して監視センターに送信しており、センターでは異常の有無を常時監視しています。

設備・機器の監視

正常状態の定義
(単位空間)

48~96時間前のデータ、および21~28日前の中で、正常であることが確認されている5時間をそれぞれ選定し、二つの単位空間を設定します。できるだけ直近のデータでダブルチェックすることで、厳密で季節変動などの影響を受けにくい判定が可能となります。

計測データ

温度、流量、磁力特性など複数の計測値を10分ごとに得ています。そのため、数通りの時系列データとなります。

特徴化

前処理により時系列データを2種類に分割し、変化量・存在量などの特徴量を抽出します。

結 果

多数の医療機関に設置されている機器の一括監視が可能となりました。さらに異常可能性を検出した際には、原因診断により異常部位を特定し、交換部品や要員準備等の手配を行っています。

マハラノビス距離の時間推移異常原因の診断結果

補 足

医療機器は人命に関わるため、MTシステムで得た情報を基に検査機器メーカ側の複数の人員が最終判断を行います。監視の負担が大幅に軽減されたため、サービスコストの低下と質の向上が実現しました。

関連ソフト


波形形状検査

概 要

スペクトル波形は、ピークの形状や高さに情報を持っています。分光スペクトルやクロマトグラムなどが代表例ですが、ここでは1個のピーク形状の場合についてご説明します。

下方の図は、ケーブル自動圧着機における圧力曲線です。もし芯線はみだしや位置ズレなどがあると、図右側のように波形に歪みが現れます。波形のどの位置に歪みがあるかを検知することで、異常種類を特定することもできます。

正常状態の定義
(単位空間)

圧着が正常に行われた場合を単位空間とします。この事例の場合は、数十の正常波形を単位空間とします。単位空間の数はピーク数や複雑さにも依存します。

計測データ

ケーブル自動圧着機に取り付けられた圧力センサーの変化曲線が計測データになります。図左に示すように、正常圧着の場合にはほとんど同じ形状となります。圧着部品の形状が反映される、立ち上がり部での凹みが重要です。

圧着波形 圧着波形

特徴化

波形形状を効率的に特徴化する「開始長・終了長」を抽出します。これらは弊社の特許技術です。

結 果

上の右側の図、赤色の曲線は異常と判定され、さらに異常箇所も特定されます。

補 足

複数のピークがある場合も、同様に正常波形との同一性を評価することができます。

スペクトル

関連ソフト


メッキ膜厚推定

概 要

メッキ加工の膜厚は温度や時間などの要因で変化します。複数の要因から膜厚という一つの結果を精度よく推定することは重要なことです。

ここに示す事例は、複数の要因から膜厚推定の式をMSR(Multiple Single Regression)で推定した例です。

正常状態の定義
(単位空間)

MSRあるいはT法(1)では、過去の実績データから”推定式”を求めます。正常状態という意味での単位空間はなく、実績データの中の中央付近のデータが単位空間となります。

計測データ

時間や温度など8項目を説明変数、メッキ膜厚を出力値として計測しています。

特徴化

特徴化はせず、生データを利用しています。

結 果

下の散布図に示す結果となりました。横軸が実績値、縦軸が推定値です。比較的よい推定ができていると言えます。説明変数ごとの回帰係数や相対関係もわかるため、膜厚の制御が可能となりました。

メッキ膜厚推定散布図

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